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アリスの真意とは?[妄執世界のアリス(作者:千里万里)]

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評価:7/10点
 
素直に面白かったです。文章のクオリティも高くて、ストーリーもバランスが取れています。正直、もっとポイントが付いていても全然おかしくない作品だと思います。
 
なろうだとわかりやすいチート要素がないと受けにくいので、しょうがないんですかね……。間違いなく読める方なので、自信持って続けて頂きたいと思います。
 
まず設定が面白い作品です。決して捻ったものではないのですが、正統に面白い。終わってしまった世界をやり直して、正しい方向へ導く。こういうの、まあよくあるけど好きなんですよねえ。
 
この物語には主人公が二人いまして、タイトルにもなっているアリスと、もう一人、一般人である少女のナユタです。
 
アリスは、元々の世界が滅びた原因となる人工知能を生み出したキャラです。世界のやり直しさえ可能で、デウス=エクス=マキナ的な、全能に近いキャラとして描かれています。そういうわけで、ちょっと超然的なところがあると言いますか、裏でこそこそやっては物知り顔で何か言ったり考えてたりといったポジですね。しかし一方で、人間らしいところもありまして、胸の大きさを気にしたり、そんなかわいいところもあります。
 
事実上、物語を動かす役回りとしての主人公はナユタでしょうか。彼女が駆けずり回って一生懸命自分の置かれた状況や困難に立ち向かっていきます。
 
プロローグは過不足なく、興味を惹き付けるような内容になっていると思います。最初にちらっと読んで、「お、これは面白そうだな」と思いました。
 
ただ、プロローグの引きは十分なのですが、対して序盤の話の雰囲気が平凡で、のんびりしていますね。やや退屈というか。面白いところまで行き着くまで、間延びした印象を受けました。プロローグの内容から当然期待されるもの(世界を導く要素)が中々出てこないので、危うく肩すかしを食らうかと心配になりました。
 
序盤でいかに読者の興味を持たせ続けられるかが、結構勝負所ではないでしょうか。
 
しかしながら、序盤の話それ自体にも一定の魅力があることは認めます。キャラクター一人一人の人となりをしっかり描けているので、読者はそこに生きた人間の姿を見つけることができるでしょう。
 
とりわけ、ナユタがかわいい。健気でかわいい。これで色々許されていると思います(笑)かわいいは正義なのだ。
 
やがて町同士の戦争というシリアスな展開になるのですが、そこでの心理描写が見事で、没入間を深めてくれます。ここまで読めれば、面白く読めるだろうと思います。
 
ところで、作中でアリスが行っていることなのですが……解釈が難しいですね。世界が平和に、一見良い方向へ移行すると、結果として機械が支配する未来に早く近づき、人間は淘汰されてしまう。だからあえて一見悪い方向へ向かわせて延命する、ということなのでしょうか。逆説的な行動の裏にある真意は……。うーん。
 
あと単純な疑問なんですけど、果たして中世っぽい時代だけで物語は終わるんですかね。元の世界の終着点は相当な未来だと思うんですけど、今のゆっくりした展開からそこへ繋がる姿が、まだまだ見えてきません。あらすじ的には、ナユタの時代で終わりそうなんですけど、どうなんでしょうか。
 
ともかく、期待値は高そうです。ともすれば山場以外が間延びして退屈になりそうな印象なので、上手く期待を持たせたまま読者を引き付け続けられるかが、今後のポイントになりそうですね。