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文学を面白さで評価するのは難しい……[雪紅 ―――或る少年の一日―――(作者:九藤 朋)]

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評価:6/10点(素晴らしさ:8/10点)

 

とある少年の平凡な一日を見事な筆致で描いたものです。ジャンルの通り、文学的表現が多用されておりまして、「それは少年にシャーベットを食べるに似た快感をもたらした」など、味わい深い表現もあって良かったと思います。


全体的にレトロな雰囲気に満ちており、どことなく望郷的な懐かしさを感じさせます。

 

ただ、面白いか面白くないかで言うと……評価が難しいですね。

 

内容的には、どこに向かうわけでもなく、本当にただ少年の一日をなぞっただけなのです。ドラマチックなことは何もない。ほんのちょっとしたことと、それに対するちょっとした心の動きをしみじみと楽しむような作品です。

 

最後にとある少女を好いているような描写はあるにせよ、特に何をするわけでもなく。我々は彼の一日をやや離れたところから眺めて、この物語を読んでいるほんの数分だけ交差して、互いに過ぎ去っていくだけなのです。一期一会のような趣がありますね。

 

面白さというより、素晴らしさや素敵さという尺度で評価すべきものなのかもしれません。そちらの尺度で計るなら、素晴らしいし素敵な作品だと思います。短くてささっと読めますので、文学的な味わい深い作品が好きな方にはぜひおすすめしておきます。